無職ヤロウの一人旅はときどき辛辣な石川県とともに
「ど、、どこだ? ここは一体」
長い夜行バスの旅を終えて金沢に着いた私は、
最初に見学する施設へ行くため、電車に乗り込んだはずだった。
おかしい。こんな綺麗な海へ来る予定はなかったはずだ。
海辺でキャッキャとはしゃぐ子供たちを遠目に眺めながら、
私はここへたどり着いた経緯を思い出すことにした・・・。
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朝、目が覚めると、そこは北陸だった。
正確には富山を通過したあたりからFate Grand Orderを起動して
種火周回をしていたので、トンネルを抜けたら雪国的な感動はないのだが。
夜行バスでの地獄旅を終え、初めて足を踏み入れる北陸は、
東京と変わらず湿度が高く蒸し暑い。
東京と変わらず湿度が高く蒸し暑い。
朝6時の駅構内はガランとしていたが、時間が経てばやがて通勤・通学・旅行者で埋め尽くされる。
あまりの人の多さに「きょうは平日だよな?」と思わず携帯のカレンダーを確認してしまったが、やはり平日で間違いないようだ。
さすが観光地。予想以上の賑わいを見せている。
トイレで着替えを済ませ、手頃なベンチに座ってから
本日の行動プランを確認することにした。
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①石川ルーツ交流館 に行く。
②白山市立博物館 に行く。
③松任ふるさと館 に行く。
④金沢市内の施設(博物館、図書館等)めぐり
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ルーツ探しと言えば聞こえはいいが、やることは観光に近い。
(もっとも、帰ってきてからもっと本格的な取材活動をするべきだったと後悔するのだが。それは帰ってからの話)
まず最初の施設は朝9時に開館する。今はちょうど8時をまわったところだ。
開館一番乗りをするべく、電車で最寄り駅まで移動することにした。
開館一番乗りをするべく、電車で最寄り駅まで移動することにした。
加賀国の洗礼(Booby trap)
切符を買い、列車に乗り込むと、車内は学生たちで混みあっていた。
私服姿からして、おそらく地元の大学生だろう。
彼らに囲まれながら、若い気分に浸っていたのもつかの間、
『次は美川~美川です。降車の際は~』とアナウンスが耳に入る。
『次は美川~美川です。降車の際は~』とアナウンスが耳に入る。
駅から施設までは徒歩10分ほどだ。朝早く行動しているためか元気があり余っている。
プラットホームに電車が着く前に、颯爽と座席を立ってトビラの前へ駆け寄る。
プラットホームに電車が着く前に、颯爽と座席を立ってトビラの前へ駆け寄る。
もう降りる準備は万全だ!
『美川です』
さあ着いたぞ!
ここからが旅の始まりだ。
ここからが旅の始まりだ。
『・・・』
……。
…あら?
電車のトビラが開かないんですけど!?
電車のトビラが開かないんですけど!?
『発車します』
おい、ちょっと待て。
私の悲痛な叫びも知らずに、電車は走り出した。
降りる気満々でトビラの前に突っ立っていた私へ、車内の学生たちから冷ややかな視線が集まる。
切符代以外にこんな羞恥プレイのサービス料まで払った覚えはない。
背中に浴びる痛々しい視線を感じながら、そっと扉の横に目線をそらすと、
このような注意書きがあった。
『降車の際は、開閉ボタンを押してください』
いや教えてくれよ!!!!!!!!!!!!!!!(^ω^)
アナウンスなんてなかったぞ! あったかもしれないけど!
そういえば2つ前の駅で、まるで外に荷物でも置いてきたかのような
慌てた人相をした男性が隣の客車からここ(最後車)まで走ってきたけど。
まさかあの人も、降りそびれたのではなかろうな。
慌てた人相をした男性が隣の客車からここ(最後車)まで走ってきたけど。
まさかあの人も、降りそびれたのではなかろうな。
”降りるボタン”を押さないといけないなんて、いままで経験したことがない。
これが東京暮らしに慣れてしまった人間に対する洗礼か。
少なくとも北海道のワンマン列車にだってなかったぞ。
やはり無職に対する、社会のアタリは厳しいのだ…
少なくとも北海道のワンマン列車にだってなかったぞ。
やはり無職に対する、社会のアタリは厳しいのだ…
顔を羞恥に染めながら、何事もなかったかのように取り繕い、
座席に戻る。
とりあえず次の駅で降りよう。
いや、降ろしてください。
座席に戻る。
とりあえず次の駅で降りよう。
いや、降ろしてください。
そう強く心に決めた。
ぬれて行くや 人もおかしき 雨の萩
降車した駅は小舞子というらしい。
戻り電車の時刻表を見ると……ジャーンジャーンジャーン。
次は50分後だ。
なんという孔明の罠。
次は50分後だ。
なんという孔明の罠。
都会なら5分もしないうちに来るのに。
しかも、よく見たらここは無人駅である。
どうやら思っていた以上に、田舎へ来てしまったようだ。
さすがに何もない無人駅で時間を潰すわけにもいかない。
それなら歩いて向かったほうがマシだ。
ふらふらと駅を出て、少し歩くと『小舞子浜』の看板が見えた。
スマートフォンを立ち上げ、マップを開く。
確かにすぐ近くに海があるようだ。
地図上では芭蕉の句碑も示されている。
「せっかくだし海のひとつでも見てやるか」と
私は海岸を目指して歩き始めた。
~回想終了~
海水浴を楽しむ人達を眺めながら、
私は「この日本海を見に来たということにしておこう……」と
己の心に向かって、納得するよう語りかけた。
ちなみに芭蕉の句碑は見当たらなかった。
毒ヘビ注意の看板ならあったけど。
己の心に向かって、納得するよう語りかけた。
ちなみに芭蕉の句碑は見当たらなかった。
毒ヘビ注意の看板ならあったけど。
一人旅の再先が思いやられる。
石川探訪記②へつづく